歯医者に行く

私には弱点があります.それは,歯が悪い事です. しかし歯医者は嫌いです(普通の医者はもっと嫌いです). 奥歯にブリッジがあるのですが,もうだいぶ古くなっている為, 1〜2年に一度は外れてしまい,その度に仕方無く歯医者に行って, 「接着するだけでいいですから,あとは何もしないで下さい」 と言って,本格的には治さず,だましだましでいました. 10ヵ月位は大丈夫だろうという楽観と,取れても保険で払えば いいや,という安易な考えのまま,英国に来てしまいました. (出国間際に,歯科医療は保険が効かないと知って,慌てて 歯医者に行き接着の増強をお願いしたりしましたが,後の祭でした)

しかし案の定,初めての海外長期滞在での様々な苦労と, 欧州旅行での疲労が重なって,ドイツ旅行中にブリッジが外れて しまいました.英国人よりもドイツ人の方が手先が器用そうだし, 技術も進んでいそうだな…と思い,滞在先ホテルのフロントで 歯医者を教えてもらいましたが,ブリッジを元の位置に戻したら なんとなくくっ付いたので(錯覚),そのまま行かずじまいでいました. 英国に戻り,はるばる訪ねて来た友人の相手をしながら食事をして いると,もう取れたままくっ付かない状況にまでなりました. これはもう限界だろうと認識し,諦めて歯医者を探す事にしました. 果して,一体いくら位かかるのだろうか.日本だと1割負担でも 5千円〜1万円程度だから,10万円もしたら嫌だなぁ…などと, 想像は悪い方へ悪い方へ進んで行きます.

しぶしぶ ケンブリッジの検索エンジン で探すと, 場所も近く良さそうな 歯医者 が見つかりました. でも評判はどんなだろう?研究室の誰かに訊いてみようかな… などと考えていましたが,もう仕方無いので,思い切って 行ってみる事にしました.すると,値段も大したことなく (安くはないですが),雰囲気もよさげです.当日診療は無理 だったので,翌日の朝一番に予約をして,その日は帰りました. 日本でもそうですが,予め,アンケート用紙で治療歴や病歴, 麻酔の効き具合やアレルギー等を記入しました.医療系の英単語 はあんまり知らなかったので,受け付けのお嬢さんに教えてもらいました.

翌朝行ってみると,ホームページの写真の女医が診療して くれて(当り前か…),まずこちらから状況と要望を説明しました. 「10ヵ月の間保つように接着するだけでいいんだ.日本に帰ってから きちんと治すから云々」…. 通じたようで,日本でやっていたように「ただ接着」をしてくれそうです. ただし,「気になるので念の為レントゲンを撮ろう」と言ってきます. 断るのも面倒なので承諾しましたが,移動式のレントゲン装置を持ってきて, 撮影の時には皆で部屋のすみっこに退避していたのは笑えました.

さて,レントゲン写真も良いらしく,接着を開始します. ここからが英国らしくなります. まず,接着する歯を入念に磨きます.モーターで回転するヤスリの器具で, おそらく5分位の間ずっと,休み無しで磨き続けます.ちょっとしみる事 もあって,うめき声を上げて意志表示をするのですが,"sorry" と言うだけで 手は休めません.執拗な磨き方でした.

拷問のような磨きもやっと終り,さて接着です.方法は日本と同じく, ほっぺたの内側に脱脂棉を詰めて(ほっぺたが接着されない為), 練っておいたセメントで接着します.状況説明の時に予め相談したのですが, 日本に帰ってから取りやすいように,一番強力なセメントでなく, 二番目に強いのを使ってくれました(でも,日本のいつものよりも 強力な気がする…:後日の感想).接着後,しばらく歯を噛みしめて, 終ったら脱脂棉等を除去します.

しかし,致命的に日本と違ったのは,うがいの用具が無いことです. 執拗な磨きの後も,前掛けで口を拭った(よだれ状態なので)だけだし, 接着後も,口内に微小な異物があるような感じを残したまま, 治療のお礼を言って,診察室から出ました.この歯医者だけがたまたま そうなのか,それとも英国では一般にこうなのか?よく解らないまま, 会計を済ませ,帰路に就きました.噂によると,英国人は食器を洗っても すすがないとか(洗剤はキレイな物だと思い込んでいる). 歯医者にうがいの設備がないのも,こういう文化の一環でしょうか???

会計は現金で支払いましたが,翌日,領収書が郵便で送られてきました. 医療補償制度(無償)の医者ではなくプライベートの医者(正式には何と言うのか??) なので,領収書の手紙には「また来て下さいな」みたいな商売っ気を感じました. できることなら,もう行きたくは無いですね.


歯医者とその途中

  • 写真19
    正面玄関です.
  • 写真20
    通りに面したところには,このような看板(プレート)があります.
  • 写真21
    近くのラウンドアバウト.この辺は沼地なので, 通りには "fen" が付いています.
  • 写真22
    途中にある橋.ケム川です(たぶん).この近くには,なぜか牛が放牧されています.
  • 写真23
    工学部を裏手から.工学部の西側になりますが,この歯医者のために初めて こちらの方面に来ました.
  • 写真24
    先程の写真の右手側面.普段はこのさらに右手奥の正面玄関しか通りません.
  • 写真25
    工学部の南東側から. この右手に正面玄関,左手が歯医者のある方面(西)です.
  • 写真26
    同じ場所から,少し右を見ると,Royal Cambridge Hotel の正面玄関 と駐車場が見えます.ちなみにこの駐車場は,工学部の避難場所となっていて, 後日,避難訓練の際にここに集合しました. (後日談:訓練とは言え,階段が大渋滞だったので,本当に火災になったら, たぶん相当の人数が逃げ遅れるように思えました.本番では英国人はテキパキ 逃げるのかも知れませんが…)
  • 写真27
    Royal Cambridge Hotel の,通りに面した側. 正面にまっすぐ延びているのがトランピントン・ストリートで, 工学部の正門はすぐそこ(左手)です.

    おまけ

  • 写真28
    後日,この歯医者の近所に,アジア食材の店がある事を教えてもらい, さっそく買物に行って来ました.あるある,日本やアジアの食材が!! ラーメンは,皆さんご存じの銘柄ですが,香港や米国のライセンス生産です. うどんは韓国産でした.他にも味噌醤油や豆腐(この日は品切れだった), インスタント味噌汁なんかもあり,料理の器具も置いてありました.
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    Norikazu IKOMA - Nov.18, 2002 - ikoma@comp.kyutech.ac.jp